美狐はベッドの上で愛をささやく
こうして優しい気持ちにさせてくれた後、ひとりになるのはすごく心細い。
すごく悲しい。
……だから、早くわたしを家に帰してほしい。
そう願っていると、紅さんは、満面の笑みを浮かべながら口をひらいた。
「そう…………。
なんて、言うと思うかい?」
――え?
その直後、わたしの笑顔は崩れてしまった。
たぶん、口は逆三角形になってるんじゃないかな。
それくらい、紅さんの言葉はとても予想外だった。
「そうだね。
もし、紗良ちゃんが誰かしらから本当に大切にされているなら、君は悪霊には目をつけられないんだ」
紅さんが何を言っているのかわからなくって、わたしは必要以上に瞬きを繰り返した。
その反動で、目からは溢れた大粒の涙が、ポロポロと落ちた。
そのわたしを、紅さんは引き寄せて、抱きしめる。
見上げると、なんだろう。