美狐はベッドの上で愛をささやく

でも、本当の事は言えない。

言えばきっと、紅さんはとっても優しい人だから、夕飯を一緒にしようとすすめてくるに違いない。




だったら……。



「はい、だから早く家に帰らないといけなくって……」

紅さんは勘が鋭そうだから、わたしはもう一度ニッコリ笑った。

今度は嘘だと見抜かれないように、重ねた視線を外さないよう、踏ん張る。


「本当に?」

紅さんは、わたしの言葉に嘘がないかをじっくり見ようとしているんだろう。


わたしの瞳をジッと見つめてくる。


紅さんの視線から逃げたい。


でも、逃げたら嘘だってことがバレてしまう。


誰にも必要とされてないっていうことがバレてしまう。


そうしたら、父の次に今度は紅さんを巻き込んで殺してしまうかもしれないんだ。



「はい」

わたしは笑顔を崩さず、微笑み続ける。



早く帰してほしいと願いながら……。


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