AM1:30
「そういやお前の名前変わってるよな。夜に美しいでよみちゃんだっけ?最初読めなかったわ。」

「うん、変な名前。」

「自分で言うな。俺はいい名前だと思うぞ。呼びやすいし。」

なーよみちゃん?ニヤニヤ顔で名前を呼ばれてなんだか微妙な気分だ。



「お前さ、なんで部活入ってねーの?運動嫌いじゃないだろ?」

「家が遠いんだもん。」

「嘘つけよ。歩いて20分ぐらいだろ。」

書類の登録住所を見たんだろう。
なんて言っていいのか正直戸惑った。


「なんかやってんの?クラブチームとか。習い事とか。」

「やってないよ。」

「じゃあ毎日何してんだよ。帰っても暇だろ?」

「暇じゃないよ。色々やることあるの。これでも。」

「なんだよ色々って。」

「ご飯食べたり?寝たり?」

「そんだけ?」

「うん。」




「じゃあ、なんで毎日いろんなとこ怪我してんの?」

「…っ……」

目立つ傷は額に怪我した時だけだったはずなのに。

何のことを言ってるのか分からなくて混乱した。


「気づいてないと思ってた?俺保健の先生よ?」

ゆっくりと手が伸びてきて、長袖の袖を巻き上げた。


右手の手首から肘にかけて、大きな瘡蓋が現れる。

数日前に祖父が振り回した割れた焼酎の瓶で出来た傷は思ったより深く、まだじくじくと膿んで汚らしい。




いや、喧嘩したことにすれば。山口先生だって私を不良だと思ってたんだし。


「あー、喧嘩したんだ。絡まれちゃって。えへへ。」

「違うだろ。」

はっきりと否定された。
次の言葉が出てこない。どう言えば。どう理由をつければ……




「よみ。」

優しい声が名前を呼んだ。

こんなのズルい。こんなの、こんなの…



混乱した頭が思考をやめた。

こらえきれなかった涙を大きな手が拭い去る。



「話してよ。俺は絶対お前の秘密は守るから。」
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