Schneehase~雪うさぎ
身代わり王子にご用心番外編
だが、オレ以上にガチガチに緊張していたのが桃花。自分は幼い頃からパーティだの何だのと公式な場に出るので慣れていたが、一般人に過ぎない彼女が慣れてないとやっと気付いた。
(そういえば、オレも物心ついた時期には怖かったな)
知らないだけというならともかく、社会的な地位のある人間が大勢集まる。そんな公式な場に来て萎縮しない方が稀だろう。
(いや、むしろ何も感じない方が逆に鈍感ってことだな)
緊張をするということは、“大切な場所”ということを理解しているから。よほどの度胸や経験があるならともかく、自分の立場と責任を感じれば、そうならない方がおかしい。
それをほぐしてやろうと、手に取ったコサージュを見て思いついた。わざと不器用なふりをしてやろうか、と。
「よかったら、私が付けましょうか?」
やはり見かねたのか、桃花が申し出てくれた。思わずこんなに上手くいっていいのか? と彼女を見てみたが。なぜか一瞬躊躇した後に、手を伸ばしてくる。
「このままじゃ目立っちゃいますから、私に任せてください」
「……」
そんなに注目を浴びていたか? と周りをチラリと見れば、桃花の言うとおりに周囲からの視線を集めていた。
そこに、女だけでなく男の目もあった。その先にいたのは当然桃花で。桂木のまた従兄弟の連中までもが、桃花に見とれてやがる。
(見るな!減る。寄るな。触れるな。近づいたら容赦しない。おまえらを会社ごと叩き潰す)
そんな警告を込めて周りの男どもを威嚇する。たった一分にも満たない時間だったのに、20人近いバカボンボンどもの目を惹いた桃花に、言い知れない苛立ちと独占欲を感じた。