さくらへようこそ

3-3.ぶどうゼリー

達也が去ってから、数日経ったある日のことだった。

いつものように開店準備をしていたら、ドアに備えつけられているベルの音が店内に響いた。

「すみません、まだ準備中で…」

そう言ってドアの方に視線を向けた美桜は驚いた。

「忍さん…」

「よっ」

そう言ってビニール袋をかかげたのは、浅井忍(アサイシノブ)だった。

彼は花屋『たんぽぽ』の麻子の幼なじみで、『東京カントリーホテル』のホテルマンとして働いている。

今年の7月に名古屋からここへ戻ってきたばかりである。

「久しぶり、美桜ちゃん」

忍はそう言うと、美桜にビニール袋を渡した。
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