さくらへようこそ
「はあ、思い出しただけでもまた泣けてきた…」

胸にあるパンフレットを大事そうに抱きしめながら彼女は歩いた。

『ニコニコ横町』の看板をくぐり、夕暮れ時の道を歩くと、自宅が見えてきた。

ガチャッとドアを開けると、
「おう、さくらちゃんお帰りー!」

工場長がグラスをかかげて迎えてくれた。

「あーっ、勝手に飲んでるー!」

彼女――横山美桜(ヨコヤマミオ)は呆れたように、でも笑いながらドアを閉めた。

「もう、不用心じゃないですか。

ドアにカギがかかってなかったそうですよ」

校長先生がたしなめるように言った。

「仮にドロボーが入ってきても、家には盗られるほどの財産はありませんよー」

美桜は笑いながら返すとカウンターの中に入った。
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