Baby I love you !!
事実
仕事帰りに立ち寄ったドラッグストアにて、私はあるものを手に取る。
「はぁ~…。」
ドキドキしながら会計を済ませた私は、深いため息を吐きながら、帰路を辿った。
自宅に帰り早速説明書を読むと、手順に従い、事を済ませた。
「うっそ……」
そして三分後、私は言葉を失った。
矢沢一華(イチカ)。25歳。独身。
妊娠検査薬、陽性。
「どうしよ~……!」
検査薬をテーブルに置いたままベッドに横たわり、枕に顔を埋めた。
一年前に彼氏と別れて以来、そういうこととは無縁だった私の心当たりはただひとつ。あの夜しかない。
頭に浮かぶ男の名は、成瀬有志(ユウジ)。通称、ナル。実家の近所に住んでいて小学生の頃からの腐れ縁、いわゆる"幼なじみ"ってやつ。
子どもの頃から何をするにも一緒で、思春期を迎えるまで兄妹同然に育ってきた。
そんな彼と、そういうことになってしまつたのは、完全に酔った勢いだ。
二ヶ月前のあの日。
共通の友人でもある親友、佐波(サワ)の結婚式で五年ぶりの再会を果たした私たちは、二次会で盛り上がり…そのまま一夜を共にしてしまった。場所は確か、駅前のホテル。
正直記憶も曖昧で、どうやってそこまで辿り着いたのか、そして何がどうしてそうなってしまったのか、ほとんど覚えていない。
次の日の朝に目が覚めて、あまりの衝撃に二人揃って頭が真っ白になったことだけは覚えている。
あれ以来、ナルとは会っていない。お互いどんな顔で会えばいいのかわからず、連絡すらも取れずにいた。
幸い私は実家を離れ東京、ナルは地元に残っている。会おうと思わなければ会えない距離が、有り難かったりする。
「はぁ……」
色んなことが甦ってきて、気付くとまた大きなため息が溢れてきた。
兄妹同然の幼なじみと酔った勢いで関係を持った末に妊娠って…ドラマじゃないんだから。