西暦2308年



「……此処だ。」


山を二つ越えたところに、小さな小屋があった。

ここは、燃えてはいなかったが、爆風で大分木々が倒されていた。
その惨状をみたセレンは、チッと舌打ちするとその光景の中では浮いてしまうくらい無傷な小屋に入っていく。


セレンは…不思議だった…。

なんで、なにがと聞かれても答えることは出来ないけど、何か未知の力を秘めているんじゃないかっていうくらい不思議だった。


セレンに続いて小屋の中に入ると、そこはこれまた不思議な空間だった。

綺麗な宝石のような石がガラスのケースの中に収められている。
しかもそれが、数えきれないくらいたくさん棚に並んでいて、それぞれ自身が光っているようにも見える。


「セレン…これはなに…?」

「……そこから、か…。」


セレンは、大きくため息をつくと手近にあった緑色の石が仕舞われたケースを取った。

「揚羽は…魔法を信じるか?」


「魔法…?」


信じるわけがなかった。
だって、この世界の全ては原子力で動いて地面や屋根に埋め込まれた人工葉緑体が二酸化炭素を吸収していて、この世界は平和なんだって教えられていたから。





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