西暦2308年
隣街を抜けて、どんどん山の方に入っていく。
「ねぇ、僕の方が不思議って、なんで?」
するとセレンは、振り返るとクスッと笑って、
「この空気の中で疲れずに平然と走っているからだ。」
「だってセレンも…。」
「私はいいんだ。不老不死だから。」
「……。」
今はまだ、"この空気"という意味がわからなかった。
だって、視界に人々が入る前に通りすぎてしまうから。
だけど、きっと人々は火事に嘆いているだけなんだと思ってた。
これが、爆発と火事だけでなく、消滅に何百年もかかる放射能を尋常ではない量振り撒いたとは、知らなかったから。
「セレン、どうして僕はこんなに走れるんだろ?」
「さぁ?スポーツはやってなかったのか?」
「ううん。走ることなんてあんまりない。外で走ったのは初めてだよ。」
「…じゃあ、私がいるからだな。余計に揚羽が不思議に感じてきたよ。」
「…?うん。」
山を越えても、まだ炎は消えない。大体、セレンの家は何処なんだろう。
そんな遠くから…僕のとこにきたのかな…?
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