強引上司のターゲット
ん?今なんて言ったんだろうと首を傾げると、なんとも自然な動きで新庄さんがすぐ目の前まで来ていた。


「寺谷さん、困ってるんじゃない?」


…困る?多少たじろぎながらも「何をですか」と答えれば


「課長になにかされてない?」


抑揚のない、感情すらなさそうな冷静な声でそう言って、その視線をあたしの目から、ゆっくりと下ろして行く。


言われなくても分かる。

新庄さんはあたしの唇を見て、あたしと課長に何があったのか問いただしているんだ。


その行為は、直接触られたわけでもないのにすごく…ドキッとさせられる。


けれどここでバレるわけにはいかない。
課長の家に行ったことも、事故とはいえ泊まってしまったことも、とにかく隠し通す!


「何もないですよ?本当に!」


あたしはいつもの笑顔で答えた。
そう、これさえできれば完璧!


な…はずだった…。



新庄さんのしかめっ面に、あら?と思った次の瞬間、グラついた視界と圧迫感に息を飲んだ。


あわ!わわわわ!
これ、ヤバいやつ!
新庄さんの長い腕はあたしの背中を完全に閉じ込めている。
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