強引上司のターゲット
うろたえるあたしを見て、ふっと笑って口角を上げた課長は、組んでいた腕をゆっくり解くと、その手が何をするのか見せつけるかのように近づける。

それでもまだ課長の視線に捕まったままのあたしは、その刺激にビクッと震えた。

な、なななな!
なにを?!
して、いるんですかこの人は?!

課長の指の背があたしの頬をスーッと撫でた後、朝ヘアアイロンで巻いた髪を掬い取ってクルクルといじって遊んでいるではないか。チャラい…。


ちょ、え?
え?ちょっと!
誰か来たらどうするの!と慌て始めたあたしを気にすることもなく


「こんなに女らしくなっちゃって。」


と、言った。はずだ。
その言い方のチャラさに呆れつつ、ふと違和感を感じた。


「……え、どうゆう」


「担当の男と付き合ってる?」


え?いやいやいや


「付き合ってませんけど、あの」


「ふ〜ん。じゃあ、狙われてるんだ?」


はい?いやいやいや、それよりこの手!


「あ、あの、課長」


まるで、あたしの言葉をわざと遮ってるみたい。


「今、彼氏いる?」


「彼氏?いませんけど…あの、」


手を!この手をどけて下さい!と何度も言おうとしてるのに、その隙を与えてもらえないうちにポーンという音とともにエレベーターのドアが開いた。
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