不機嫌主任の溺愛宣言
その男、溺愛

(1)


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忠臣と一華が付き合いだして4ヶ月が過ぎた。時にぎこちなく悩みながらも(主に忠臣が)ふたりは順調に時を重ね、想いを深め合ってきたように見えた。

そして季節は秋、10月。一華の誕生日があるこの月、当然忠臣は最愛の彼女をどう祝うか悩みに悩んでいた。しかも、来月には再びデパ地下の大型イベント物産展が開催される。デパ地下の良好な数字が続いてる中での大型イベント、現場主任である忠臣に掛かる期待とプレッシャーは並々ならぬものだ。

仕事も一華との付き合いも良好。だからこそ誕生日と物産展、どちらも忠臣にとっては絶対に成功させたいイベントなのである。

さすれば。毎日頭を悩ませる彼の眉間の皺が増えていくのも仕方がない。

実際は期待に応えるための明るい悩みなのだが、そこはやはり前園忠臣。その姿はどこからどう見ても“超絶ミスター不機嫌”にしか見えないのであった。


そして今日も――


「あーまた来てる……」

「商品をご案内してあげたいけど、とても声を掛けられる雰囲気じゃなのよねぇ……」

ここ数週間、忠臣は昼休みになると福見屋デパートの売り場を満遍なく見て回っていた。不機嫌そうな表情で。そして必ず足を止めるのがジュエリーショップ。そう、彼は一華の誕生日プレゼントの参考にしようと売り場をあちこち見て回っていたのだ。

しかし、彼が女嫌いの“ミスター不機嫌”だと云う噂は、デパ地下だけでなく他の売り場にもわりと知られている話だ。ましてや、お悩み中の忠臣は不機嫌全開な表情をしているのだから、ジュエリーショップの店員が声を掛けるのを躊躇うのも無理はなかった。
 
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