不機嫌主任の溺愛宣言

指輪か、ネックレスか、はたまた靴か鞄か。ここ数週間悩みに悩んだ忠臣であったが、自分が本当に彼女に贈りたいものはなんだと考えれば、答えはすぐに見つかった。

――君と一緒にいたい。これからも、ずっと。

その想いを形にして届けてくれるプレゼントを、彼は老舗のブランド店で見つけた。彼女の白い手首に可憐に映えそうなピンクゴールド。装飾品としても充分に役割を果たしてくれるそれに、バースデープレゼントらしく一華のネームを刻んでもらった。

そして忠臣の予想通り、その腕時計は彼女の細くしなやかな腕にとてもよく似合った。

静かに時を進める時計を見つめ、一華はそこに籠められた忠臣の愛を確かに感じ、目を細める。彼がどんな想いでこのプレゼントを選んだのか、胸が苦しいほどに伝わってくる。そしてまた自分も、同じ気持ちを重ねたいと、一華は強く思った。

「ありがとう忠臣さん、すごく嬉しい」

今日のために忠臣が準備してくれた数々のもの。そのひとつひとつが不器用で健気で一途な愛に溢れていて、一華は涙が出そうになる。胸が熱くなって言葉が出てこず、はにかんだように微笑むだけの一華を、忠臣はとても愛おしそうな眼差しで見ていた。

そんな彼の柔らかな表情を見て一華は思う。忠臣に恋をして良かったと。今まで嫌な出来事や面倒も多く恋愛に辟易とした事もあったけど、こんなに真摯に一途に愛されるなら一生彼と恋をしていきたい、とさえ思えるほどに。

感激でなかなか出てこない言葉の代わりに、たくさんのキスをしよう。いつもキスの雨を降らせる彼に負けないぐらい、今日は積極的なキスを私から。そう考えて、一華は隣に座る忠臣に微笑みかけると、まずはひとつ、彼の頬にチュッと口付けた。


10月24日。
前園忠臣の愛で出来たクレマチスの城で誕生日を迎えた姫君は、一生忘れられない幸せを胸に刻んだのだった。


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