ナツイロ~俺様部長様とわたしの秘密~(2014年夏短編)


「よーし、玉井。練習が終わったら3年8組に来い。俺が面倒見てやる」


「えっでもそれじゃ、完全下校時刻を過ぎるんじゃ…」


「文句を言うなら完璧に吹いてみろ。まあ、心配は無用だ。練習延長希望用紙は俺が出してやる」


「…はい」




わたしは声が震えそうになったのを必死でこらえて返事をした。




「今日も災難だったねぇ」




いつもの感じでわたしに耳打ちしてきたのは、同じクラリネットパートの同級生。




「何で庵藤先輩は陽香ばっかり狙うんだろ。陽香は小学校から吹部だし、音感もあってわたしよりクラうまいのに」


「何で、だろうねぇ…」




言えないっ。

庵藤先輩が、俺様部長様、兼、わたしの彼氏様ってことなんて。


そして、こうして時々練習後に呼び出されては逢瀬を繰り返しているだなんてっ。


このお付き合いのことが誰かに知られたら、俺様彼氏様は何をしでかすかわからない。


別に、吹奏楽部は部内恋愛は禁止されていないのに、どうして口止めされているのかわからないんだけどね。


だったら隠すことないのに。


超モテ男の庵藤先輩だもん。いつわたしのことを捨ててしまうかもわからない。


「庵藤深月はわたしの彼氏だー!」って宣言してしまいたい。


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