ナツイロ~俺様部長様とわたしの秘密~(2014年夏短編)
わたしたちは、わたしの一目惚れから始まった。
新入生歓迎会のときに初めて見た、庵藤先輩の演奏する姿。
堂々としていて、しかもイケメンがクラを吹いているもんだから…。
ズキューンて、わたしのハートは撃ち抜かれた。
そんな彼が、普通系女子代表のわたしの彼氏様なんだ。
幸せです。うふふ。
あ、お付き合いが秘密だってこと以外に関しては。
「玉井! ぼんやりしてないで、早くクラ構えろ!」
「は、はいっ!」
完全にトリップしていたわたし。
また俺様部長様にねちねち言われたのは言うまでもない…。
「待たせたな」
日が落ち、静まりかえった練習後の教室。
ちょうどコンクールの課題曲のクラが一番目立つフレーズを吹いて、自分の音に酔いしれているときだった。
俺様彼氏様の庵藤先輩が現れた。
個別特訓という名の、密会の、始まりだ。
「いよいよ、明日だな」
「そうですね。深月先輩」
「なんだ、お前、怒ってんのか?」