ナツイロ~俺様部長様とわたしの秘密~(2014年夏短編)
当たり前でしょっ。
楽器を吹くのに、自分の精神状態も大きく関わってくるのは演奏者にとっては常識。
それなのにわたしは、コンクール前日にいつも通り庵藤先輩に怒られたんだから。
明日、上手く吹けなかったら絶対この人のせいにしてやる!
「怒ったのを、怒ってる?」
「フンッ」
「仕方ないだろ。俺たちは付き合ってることを公にはしてないんだから、ああいう方法でしかイチャイチャできないんだから」
「い、イチャ…」
あれのどこがイチャイチャよ!
部員の前で頭ごなしに怒られて、わたしが一方的に恥かいてるだけじゃない!
どんなプレイよ、まったく。
「だってさ、俺のかわいい陽香をみんなに見せてやりたいじゃん♪」
「わたしはかっこいい深月先輩を今すぐどこかに隠してしまいたいですけどね、誰にも見せたくないので」
「へぇ。そんなにふたりきりでイチャイチャしたいの? ふぅん。かわいいじゃん」
庵藤先輩はニヤリと不敵な笑みを浮かべると、わたしに触れるだけのキスを落とした。