確信犯
「…無理、しなくていいです」
語りのキッカケに、そう伝える。
「敬語」
背後から私をくるむ匠は、面白くなさそうに指摘した。
「そろそろ、統一しろよ」
噛みつく時だけは敬語じゃなくなる私に、匠はそう言う。
これは、クセみたいなモノなのに。
「オマエにはもう、“間違ってる”と思いながら選んで欲しくないから」
匠の温度を伝えながら。
匠の心は溢される。
「もう、震えなくてイイようにしてやりたい。俺は他に何もいらない」
時々、コワレモノに触るみたいに、匠は私に触れる。
「助けてやりたい。守ってやりたい。そう思えるのが、こう……なんかイイんだ。無償の愛だな」
首筋が、温かい。