確信犯



「…どうしたいの?」



いつか、匠に言われた言葉で問う。


『オマエはどうしたい?』


そんなに甘やかしてどうするの?






匠から、吐息が漏れる。



「…スマートじゃない行動ばっか取らされてる。これでも心は必死。オマエの心がホドけるの待ってんの」






ぎゅっ、と力が込められて。


大きな肩幅だとか。


洗った髪の香りとか。


そういうのが胸に迫る。






「ミモリ……美森」



名前なんて。


もう、記号でイイ。






『八重』で、『美森』の私は。


やっぱり、ただの女。






手を伸ばせば。


柔らかい匠の髪が濡れていて。


仰け反ったら、その水気も香りも、吸い込みたくなる。






こんな時しか、素直になれない。


匠は、最初から見抜いてた。





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