私と上司の秘密
程なくして、海岸の駐車場に、車を停めた。


どちらからとも言った訳ではないが、堤防の
階段を下りて砂浜を歩いてみた。


私は何も考えずに歩いていたが、今日は、ヒールを履いていたことに今さらながら気付く。


なので、すぐに、ヒールの中に砂が入って
きた。


始めはそれを気にしながら歩いていたが、段々、鬱陶しくなってきて、最終的には、
履いていたヒールを脱いだ。


『裸足で歩くのって、何年ぶりだろう…?』


砂の感触が気持ち良く、年甲斐もなく、
バカみたいに、大袈裟過ぎる程、わざとらしいかなというくらい、はしゃいで、楽しんだ。


周りに親子連れの姿も見られ、


『今の私は、このチビッ子と一緒だわ。』

と自分に呆れてしまう。


今の私は、それでも自分を捨てて、
はしゃいでみたかった…。


課長の方を見ると、目を細めて微笑みながら
私を見ているように見えた。


課長に手を振ってみると、
振りかえしてくれた。


少しして、


「そろそろ、帰ろうっか!」

と課長の呼ぶ声がして、堤防を上がり、近くの
水道で、足を洗った。


ひんやりした感触が、とても気持ち良くて、
砂を洗い流すと同時に、辛い思い出も流して
くれたような気がした…。
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