唯一奇譚
名は体を表す

一.




祇園祭の夜は地面から湧いて出ているかのような人混みで、歩くだけでいつもの三倍疲弊する。

誰かが提案してくれたおかげで三年ぶりに着る事になってしまったポリエステルの浴衣は身体にべたりと張り付いて気持ちが悪い。



そんな中で私はあの男とすれ違った。

男は二十六、七と見えた。白茶の着流し姿は美しく、着慣れずに何か間違っているような輩が多い中で目を引いた。

それだけならば良い。心の中で有難うと手を合わせ、十分に目の保養とさせてもらおう。

しかし私は見てしまったのだ。
すれ違う時。

男の頭に狐の耳を。







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