唯一奇譚
「いらっしゃい。」
何が起こったのかと思った。
扉を開けた瞬間身体が引き込まれて、
次の瞬間
閉まった扉に身体を押さえつけられていた。
「い..ったあ〜...」
固く瞑った目を開くとそこには
先ほどまで追いかけてたキツネ男。
しかもどアップ。
でもハッと見上げると
その頭に耳はなくて、
急速に目的を見失ったわたしの目が
気まずく泳ぐ。
そんな私にいらっしゃいと声をかけ
男は綺麗に笑った。