恋愛ジャーニー
でも彼が、独特の空気を纏いながら、こっちの空気と調和するように紡ぐ言葉は、なぜか私を不快にさせなかった。
「……でも、何もなさすぎて、何もないことを当たり前に感じてしまうようになってしまうと、」
ぼそっと呟いてしまった言葉を途中で止めた。
……ネガティブな私がすぐ出てくる。
せっかくここを良いと感じてくれている人に、わざわざマイナスポイントを言う必要が、今あるのだろうか。
ふとそう思い、喉元まで込み上げた言葉を飲み込んで蓋をした。
「……なんでもないです。
桜木町に行くんですよね?私、ちょうど桜木町のスーパーに向かう途中だったんです。途中まで案内しますよ」
一気に言い切ると、立ち上がってズボンについた草や土を手で払った。
「おや、そうでしたそうでした。長い間話に付き合わせてしまってすみません。是非、案内よろしくお願いします」
そう言うと、彼も私に倣った。