恋愛ジャーニー

上昇した体温が顔を赤くさせていくのがわかったので、たまらずに俯く。

膝を抱えてうずくまるように座っていると、バクンバクンと、心臓がうるさい。



「僕は、生まれも育ちも東京です。都会の喧騒の中で生きてきました」


そんな私を横に、彼は静かに話し始めた。


「近くを走る電車は深夜までうるさいし、街は人が多すぎて歩き辛いんです。便利なのは有難いんですけどね」


下手な相槌は求められていないような気がして、私は何も言わずにうずくまったままで、彼の話に耳を傾けていた。


「でも僕には、こっちのゆったりとした空気の方が合ってる気がしてしまいます。どうも、向こうのせかせかした感じがいつまでも苦手なんです」


よく、都会から規制やら観光やらで田舎に来る人は、空気が綺麗で羨ましい、こんなところに住んでみたいと簡単に言うけれど、田舎暮らしはなかなか大変なことも多い。

電車は1時間に一本あるかないかだし、オシャレなショッピングセンターなんて近くにはないし、虫と鉢合わせる機会も都会より断然多いだろうし、

彼らが実際にここに住むなんてことは全くもって非現実的なんだ。

だから彼らが言う『羨ましい』という安っぽいセリフを聞くと、イラっとしてしまうことが多い。

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