ただいま。
「別に盗み聞きしようなんて思ってはなかったんだけどね」
「まぁ、大丈夫ですけど」
「すまないね。・・・で、有岡くんに話しておきたいことがあってね」
先生が少しだけ背筋を伸ばしたような気がした。
その瞬間俺の中にも何かピリッとしたものが走った。
「青葉さんなんだけどね、一部、記憶障害があるかもしれないんだ」
キオクショウガイ?
「記憶障害って、あの、思い出せないことがあるってことですか?」
「そう、だね。簡単に言えば、記憶が何らかの原因で消えてしまった、忘れてしまったようになっているんだ。記憶喪失って聞いたことはあるかもしれないな」
唯花が、記憶喪失。
「それって、よくドラマとか漫画とかで、ふとした拍子に思い出したりするやつですよね。だったら唯花も、急に思い出すことって」
「うん、可能性はゼロじゃないよ」
実際にそんなことが起きるなんて思ってもみなかったことだし、今こうして話を受けても、実感があまり沸いてきていない。
だって、あの唯花が、って。
一度の事故でそんなことになるって、なんで、どうして・・・。
「青葉さんの場合は一部の記憶が欠落しているようで、特に有岡くんとのことなんだよ」
「え、俺のこと、ですか?」
「さっき簡単に、というか、勝手にテストをしていてわかったんだけどね。ご家族のことを始め、青葉さんの友達関係の話をしていると、有岡くんの話になると頭が痛くなってしまってね」