ただいま。
「俺、別に事故のとき唯花に何もしてません!」
「大丈夫、そんなことを言っているんじゃない。それに確実に記憶喪失かどうかも、さっき簡単に聞いてみて思っただけだから」
もし、俺のせいで唯花が記憶喪失になってしまったんだとしたら、と思うと怖くなってしまった。
記憶を取り戻す云々のことよりも、そんな事態にさせてしまった自分を憎むことになる。
「仮にそうだったとして、記憶喪失っていうのは、その人に対して何か特別な何かがあった部分、それが怖かった記憶だったり、大切な記憶だったり、いろいろなんだ」
つまり、と先生は俺にそっと近づいて優しく笑った。
「青葉さんにとって、有岡くんが何か特別だったのかもしれない」
「・・・特別」
唯花にとって俺の存在がどんなものだったのか、今は聞けない。
でも、もし本当に俺のことを特別に思ってくれていたとして、その記憶をなくしてしまっているんだとしたら。
すげぇ嫌だ。
「もしかして、さっきの唯花の怒り方って」
「なにか、苦しいのかもしれない」
何かモヤモヤしたものが心の中にかかっている状態、っていうシーンをドラマで聞いたことがある。
今もしその状態なんだとしたら、さっきのあれも少しわかった。
「今は僕らもどうすることもできず、っていうのが医療なんだ。カウンセリングで記憶が戻ってくる人もいるんだけど、それよりもやっぱり身近にいた人間との接触っていうのが一番強いんだよ」