ぬくもりを感じて
凛花はいたずらっぽく笑みを浮かべると、智樹を指差して言った。


「智樹さんも智樹さんのお兄さんの大樹さんにも感謝してます。
私の知らないところで、どういうつながりがあって、誰が無視されてるかなんて私にはどうでもいいことだもん。

とにかく、この学校にいれてくださって、住むところにも不自由しなくてよくて・・・それだけでもすごく感謝しなきゃいけないことっていうのもよくわかります。

生活費も高校卒業したらきちんと払っていこうと思っています。
だけど現時点では仮定でしかないです。

私の記憶が完全にもどっていないのと、ここにいない人が私に正しい情報をくれていないから。

智樹さんのお気持ちはよくわかりました。
でも、今の私は感謝することと、智樹さんのしてくれることに乗っかることしかできません。
勝手で失礼なのはわかっています。
ごめんなさい・・・。」


「嫌ってないのであれば、いいさ・・・。
ただ、ときどき僕の理性が消えてしまうのは許してほしい。
ってのも勝手な言いぐさだなぁ。

簡単にいえば・・・やばい!と思ったら逃げろ。
それだけだ。」


「ほんとに勝手ですね・・・。
キスまでしたくせに。」


「ああ、昔はモテたおっさんだからな。」


お互いにどきどきして妙な時間が過ぎていった。

まさか翌日にはこの関係が続かないとは2人とも予想していなかったが・・・。





翌日、智樹は放課後に兄の大樹から理事長室に来るように連絡を受けていた。


そして、凛花も学校の帰りにある人物に出会った。



「お、お兄ちゃん・・・・。」


「凛花、遅くなってごめんな。」


凛花は日本で初めて兄の瑞樹の家へと入った。

ポストも広告でいっぱいになり、玄関回りもかなり荒れていた。


「時間かかってしまったな・・・。」


「お兄ちゃん、どうしてアメリカへ行ってなかなか帰ってこなかったの?」


「それはな・・・」


瑞歩の話では、凛花の作ったという問題の安全装置から高性能な小型爆弾へ作り変えられている状況を探りに行っていたという。

化学者でもある瑞歩は、凛花の働いていた研究所からの呼び出しで、記憶のなくなった凛花にかわって、凛花の作った安全装置がどういういきさつでどんな変化を伴って小型爆弾に変貌をとげたのかを調べにいっていたらしい。

その過程で、凛花が設計図らしきものをどこかに置いていないかも探したらしいが、どこからも出なかった。

そして、両親がその設計図の持ち主に間違われてしまった事実もつかんだ。


「やっぱり・・・お父さんとお母さんは私のせいで・・・。」


「違う!凛花が作ったのは間違いなく爆薬を使う場所での安全装置だ。
遠隔操作で、なんらかのアクシデントがあったときでも、謝って爆発してしまったり、爆発予定ではないところでの危険を確実に回避できる、いいものだったんだ。

だけど・・・安全装置から高性能爆弾のヒントを得た化学者がいたってことだ!
そいつが、いちばん危ないヤツなんだ。

それで、俺はそいつの足跡を追っていた。そしてつきとめたんだ・・・。」
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