ぬくもりを感じて
凛花はそう言ったとき、はっと我にかえった。

(わ、私、何言っちゃったの?
智樹さんをまるで・・・自分の夫みたいに・・・。
バカだわ・・・私。)


「うふふふ。さてと、家にそろそろ帰ろうかしら。
大樹さんは過労だけだったし、私も休まないとね。

先生は明日とくに異常がなければ、家に帰れるって言ってたし、智樹さんにも適度に帰ってもらうわ。」


「あの、もし、お嫌でなければ私がおじゃましてはいけませんか?
お家にどなたかお世話される方がおられたら、帰りますけど。」


「ほんとっ!来てくれるの?
明日の朝も話せる?
病院もいっしょに行ってもらえるとありがたいわ。」


凛花は翌日が学校が休みなこともあって、律子のそばに居ようと思った。

律子が智樹に凛花を連れていくことを伝えて、智樹もそれに同意した。


「姉さんを頼む。
兄さんのこれまでのがんばりにあまえてばかりもいられない。

僕もここらで決心するよ。
死んだ母さんだって住んでる家の分くらいはがんばれっていうだろう?
それに、凛花は飛び級でとっくに大人顔負けのことをやっていたんだからね。
僕もできなきゃ・・・偉そうに君に嫁に来いとは言えなくなる。」


「私は未成年の女子高生ですよ。
行ってきますね。」



律子は家にもどるといきなりソファに倒れこんでいた。


「律子さん、お疲れがたまっておられたんでしょ。
ベッドまでなんとかたどり着いてください。

着替えや身の回りのことは私がしますから。」


「ありがと・・・ごめんね・・・。」


翌日も胃に優しい食事を用意してもらって、律子が世話になっている産婦人科へと凛花が付き添った。


「大丈夫ですか?
顔色はいくらかいいみたいですけど・・・。」


「うん、ほんというとね、病院でうっかり寝てしまったとき、足にいっぱい出血してしまった夢をみたの。
すごく怖かった・・・。
だけど、凛花さんがきてくれてすごく助かったわ。

大樹さんは会社の引き付きでいっぱいでしょ。
私のことまで背負わせるのは大変すぎるもの。」


「私でよかったら何でも言ってください。
智樹さんなんて、大樹さんに比べたらほんのちょっぴり仕事を請け負ってもうるさいだけなんで。」


「あはははは。ほんとに面白い人ね。
ひと回りも年上の人のことをそこまでいえるなんて、さすが天才だわ。」


「えっ・・・私また・・・ボロクソに・・・。」




「へっくしょん!!!あれ、誰か噂してるのかなぁ・・・。
凛花が悪口でも言ってるのかなぁ。」

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