ぬくもりを感じて
それから大樹は会社の代表をほとんどおりて、取締役会で決まった代表たちがそれぞれの会社の代表取締役の手続きをとることになった。

そして、花霧高校の理事長職、そして食品系の会社の研究室をまとめ、代表を智樹が、そして研究員たちのまとめ役のセンター長を瑞歩がすることになった。

凛花も研究員に名前をつらねているが、凛花はとにかく花霧高校を卒業してからと智樹に頼んだのだった。


それにはわけがあって、律子の付き添いや子どもの世話など大樹と律子に落ち着くまで・・・という契約で凛花は請け負ってしまったのである。


律子の出産後、凛花は学校が終わるとすぐに律子のところへ行き、赤ちゃんの顔を見てから律子の話し相手を少ししてから帰宅していた。

おかげで律子も育児ノイローゼに陥らずに過ごせていた。


「いつも基樹の様子を見にきてくれて、大変でしょ。
そのうえ、私のグチまできいてもらっちゃって・・・そろそろ智樹さんのためにも、あなたの時間をお返ししなくちゃね。

それにもう3年生だから、進学大変なんじゃない?」


「あ、進学は大丈夫です。すでにオックスフォードは出てますので、こっちでは花霧高校から満原産業大学に行きます。」


「えっ?そんなもったいない・・・あ、べつに産業大がレベル低いって意味じゃないのよ。
あなたならT大も簡単でしょうに。」


「まぁ、そうなんですけど、私、日本できちんとした国語が習いたかったのと、生活力というところに着目して食の安全や住まいの環境なんかの勉強をしようと思っているんです。

爆弾の知識があっても、それがどういうふうに使われるかまで知らなかったお子様知識の人間にはなりたくないんです。」


「すごいわね。じゃ、余計に時間をとってはいけないわね。
出産まであなたがいてくれてほんとに助かったし、おかげで大樹さんも智樹さんも仕事の道筋をしっかり決めることができて、大樹さんなんて、夜はもう基樹の世話ばかりしたがるのよ。

以前はそんな時間ができるなんて思ってもみなかったけれど、今はうれしいの。」


「私もよかったと思っています。
私の大失敗でたくさんの人を不幸にしたと思いましたが、今はそのおかげでたくさんの人が人間らしく生きられるようになってよかったと思っていますから。

それに、私もこれからは・・・。」


「そうね、時期的にはもういい頃じゃない?
3年生もあと半年をきったことだしね。」


「あっ・・・そんな。」


「うちに来る智樹さんがね、すごい顔で私をにらむことがあるのよ。
もう凛花を呼びつけなくていいだろう!!!みたいなね。」


「ええっ、そうだったんですかぁ!
そんな・・・ひどいです。」


「いいえ、私はいっぱい助けてもらったわ。
今度は私があなたを助ける番よ。
がんばってね。」


「は・・・ぁ・・・はい。」
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