あまのじゃくな彼女【完】
怒り続けるのは正直疲れる。だけどもっていきようのないパワーは発散させなきゃどうにもならない。
やることはやろうとガッツリ仕事に入れ込んでいると、あっという間に定時から2時間が過ぎていた。気が付けばほとんどが帰宅していて、声を掛けられた記憶もない。
私が怖かったからだと思う、多分。
正面のエントランスを抜けるとひんやりとした外気に触れ、鼻先にツンとした感覚。思わず肩を縮こまらせ駅へと帰りを急いだ。
ふと建物の角を曲がり街路樹で身を隠すように、1台のセダンが停まっていた。4つの輪マークの外車は後ろの座席がスモークガラスになっている。
見るから怪しい車に危険を感じつつ、興味本位で思わずちらっと視線を走らせると
「何よ、ケチ!食事くらいいいでしょ」
「俺は帰って仕事するの。行くなら1人で行け」
夜なのに広いつばで顔を隠すようにしている女性は、その明らかなモデル体型から一瞬で黒澤綾江だとわかった。とすれば、もめているのはうちの係長様に違いない。