あまのじゃくな彼女【完】


物撮りの時の嫌な記憶がよみがえる。


『素人のくせにでしゃばって』

『アイツ厚かましいんだよね』


仕事の話のはずなのに、全然違う所に影を落としどす黒い感情が波紋のようにゆっくり広がる。



人に指摘されるまで気づかないなんて・・・ほんとどれだけバカなのよ。




「めぇちゃん、ちょっと来てー」

自己嫌悪の渦に暗く沈む中、舞原さんに呼ばれた。



「ねぇねぇ、こっちとこっちどっちがいいかしら?」

「えっ・・・」

「この角度もすてきだけど何かエロ過ぎる気もするし、かと言ってこっちは余白がもったないのよねぇ。ねぇ?」



そんな問いかけに返す答えを、今の私は持ち合わせていない。

綾江さんの美しさに自分の不出来が露呈されて、暗い沼の底まで沈みきった心では撮影の様子が全く頭に入っていなかった。

例え撮影をしっかり見ていたとしても、私は何も知らない〝素人”のくせに・・・一体何が言えるというのか。

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