蝶々の欠片
全ての始まり
死ぬ時にゆっくり時間が遡るのって嘘だろうって思ってた。
何ヵ所も刺されてるのに、血だって出てて手なんか血まみれで、立ち上がる事も出来ない、そんな時にこんなに満たされるような幸せな気分になるなんて。

「幸せそうな顔ね。」
僕の顔を覗きこむ綺麗な女の子。
それも二人。死ぬ時に迎えに来てくれる天使だろうか?
「て、て、ん、、、し?」
ゴホッと気管から血か何かがむせかえる。苦しくないのは、もう死ぬから?そんなバカなことを考えていると、二人は気の毒そうな顔をしながら微笑んだ。

「だったら良かったのだけどね」
そう言うと、二人が死にそうな僕の傷口に触れた。
少しずつ眠くなってゆく。これが死ぬってことなんだろうか。
なら良かった、案外楽勝じゃないか。
笑えるくらい楽勝だ。
これが僕で良かった。

「あなたの願いを叶えましょう」
女の子の声が聞こえた。
それが僕に言ったものなのか、他の誰かに言ったものなのか、残念ながら僕には知りようがなかった。
もう意識を手放す寸前、見えたのが君だった気がするのはただの願望かな?
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