蝶々の欠片
「眩しい」
一面真っ白な世界。
ここが天国なら、次は何をしたらいいんだろう。ぼんやりそんなことを考えていた。
 
いきなりシャーッと勢いよく真っ白な世界をぶち壊す音が響く。
僕は起き上がりもせず、ただ眺めていた。

「和希(かずき)!大丈夫!?」
ガバッと抱きつかれて胸や腹に鈍痛が走る。

鈍痛?
死んだと思っていた奇妙な安心感から、何とも言い知れない不安感が広がっていく。
だって死ぬほど刺されたた筈だ。
よしんば、助かったとしてこんなに自由な筈がない。
腕を見ると点滴の管が一本。
胸や腹には包帯がグルグル巻きだが、どうやら湿布を固定する為のようだ。
あんなに血まみれだったのに?
抱きしめられながら、血の気が引いていくのがわかった。
おかしい。

「和希?大丈夫?頭も強く打ったらしいじゃない。あたしのことわかる??」
不安そうに顔を覗きこんでくる。
いつもの可愛いクルクルの明るい髪にハッキリとした顔立ち。真っ白な肌。
皆から華よ蝶よともてはやされていた。。

「水希(みずき)」
そう言うと、水希が少し安心したように微笑った。

「心配したわ。和希が暴漢に襲われて怪我をしたって聞いて。大事な妹だもの。昔から運動苦手で護身術すらリタイアしちゃうレベルだったしね。通りすがりの親切な人が助けてくれなかったらどうなってたことやら。」


ちょっと待って!!
そう言いたいけれど、唖然としずぎて声が震えている。
「ちょ、ちょっと待って!僕は刺されたんだ、よ、?ね?しかも運動苦手っ、て何?僕は体育だけはオール5だし!さっきのだって急にナイフ出してこなきゃ、あの人数だって全然余裕だし!!」
混乱してるからか、涙がにじみ出てくる。
こんなのおかしい。
身体中が叫んでるみたいに軋んだ。


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