猫の世界と私
「何も思い出せない。わからないの。窓際で視線は止まる。けど、それがなぜなのかは分からないし、記憶がある気がする…なんてこともない…ただの気のせいなんだ、としか思えないの」

「……そこまで…」

「え?」

「他の記憶は思い出すことが出来たのに、ここは思い出すことができなかったの?」

「……未来…どういうこと?もしかして、私のこと…知ってる?」

「………私が知っているのは、名前だけ…」

「え?」

「私が知っているのは、結愛の名前だけ。結愛自身のことは知らないの」

「どうして?何で知ってるの?」

「………」



結愛は未来に縋り付くように必死に疑問をぶつけた。

未来は何かを知っている。
自分自身が分からないことも、きっと。
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