「異世界ファンタジーで15+1のお題」四




「ちょっと待ってくれよ。
今、灯かりを点けるからな。」

その場所は、部屋というよりは通路のようなものだった。
壁伝いに少し歩くと、急にぽっかりと広くなった場所があり、その側面には棚のようなものが設えてあった。
ライアンはそこにあった燭台に蝋燭を立てた。
静かに揺らめくほのかな灯かりが、二人の心を落ちつかせる。



「ここまでくれば、一安心だ。
ありがとう、セス。
君には本当に感謝しているよ。」

「俺はあんたに着いて来ただけだ。
感謝されるようなことは何もしちゃいないよ。
それより、あんた、なんでこんな場所を知ってるんだ?」

ライアンは、その言葉に俯き小さく笑う。



「そうだよな。
ここはごく一部の人間しか知らない場所だ。
……実はな、僕の祖父はこの城の建築に携わった者の一員なんだ。
こういう場所のことはもちろん口外してはいけない。
だから、祖父は親父にも言わなかったんだが、ある時、祖父の肩身の中に僕はこの城の設計図をみつけたんだ。
だけど、親父に言ったら取り上げられるに違いないから、僕は誰にも言わずそれを自分の宝物として大切に持っていた。
親父はね、この城の兵士だったんだ。
だから、親父に城に連れて来てもらう度に、あの設計図に描いてあることが本当かどうかこっそり確認した。
城の中はあの設計図通りだった。
この通路は、隠し部屋なだけじゃなく、城の外に通じてるんだ。
それでね…」

「ライアン、静かに!」

話を遮り、セスは燭台の蝋燭を吹き消した。



「セス、何を…」

「ライアン、黙って…!」

壁際に押しつけられたライアンの声を、セスが制止する。
耳を済ませると、誰かの足音が聞こえる。
足音は、セス達の入って来た扉とは逆の方から聞こえ、そのうち足音と共に灯かりが見えるようになった。
息を殺し、身を潜める二人の元に、不意に小さな声が聞こえた。



「ライアン…いないのか?」

「キルシュか…!」

ライアンが安堵した声を吐き出した。
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