「異世界ファンタジーで15+1のお題」四
005:脱出劇の幕開け




「あんた、一体…」

「しっ!……詳しい話は安全な場所についてからだ。
音を立てないようにな…」

「わかったよ…」

ライアンに言われた通り、足音を忍ばせ、セスは彼のあとに続いた。
囚人達は、皆、眠っているらしく、セス達の脱走に気付く者はなく、心配していた番人も、椅子に座ったまま腕を組み、眠りこけていた。
緊張の中、息をひそめ、セスとライアンは番人の前をすり抜け、注意深く階段を上って行く。



「ちょっと待て…」

ライアンは、壁際に隠れ、廊下に人がいないことを確認すると、セスに手招きした。
灯かりの下で初めて見えたライアンは、年の頃はセスと同年代程度の男性だった。
体格はあまり良くなくどちらかといえば華奢な印象だが、目立つ濃い眉は意志の強さを感じさせた。



「よし、行こう、こっちだ!」

そう言うと、ライアンは長い廊下を小走りで走り出した。
セスもそれに続く。
長い廊下を走り抜けたセスは、扉とは違う方に走って行く。



「お、おい、出口は確かこっちだぜ!」

「良いんだ、こっちだ!」

セスは、まるで城の内部をよく知っているかのように入り組んだ城の中を次々と曲がっていく。



「こっちだ!」

「お、おい、ライアン…」

「セス、隠れろ!」

セスは、不意に上着をひっぱられ、柱の影に押しつけられた。
ちょうどその時、一人の兵士が二人の傍を通り過ぎた。



「危なかったな…
でも、もうすぐだからな。
さ、急ごう!」

「あ…あぁ…」

セスは、奥まった場所にある粗末な扉に手をかけた。
扉に施錠はされておらず、なんなく開いた。
二人が中に入り扉を閉めると、ライアンはポケットから取り出した蝋燭に火を灯す。
そこは納戸のような場所で、大小様々な箱やがらくたが所狭しと場所を取り、長い間、訪れる人もいないのか、部屋の中はかび臭く、至る所に埃が積もっていた。



「ライアン…」

「セス、ちょっと、これを持っててくれ。」

言いかけた言葉を遮られ、セスはライアンに蝋燭を手渡された。
ライアンは、奥の壁をなにやらいじくる。
すると、奥の壁が滑るように横にずれ、暗い空間が現れた。



「さ、この中へ…」

「あ…あぁ……」

セスは、暗い空間の中へ足を踏み入れた。
< 16 / 91 >

この作品をシェア

pagetop