「異世界ファンタジーで15+1のお題」四
セスは、家の周りを慎重に調べ始めた。
しかし、セスがこの場所を離れた時より雑草が増えてること以外は、特に変わった様子もないように見受けられた。
これといった異変を何も見つけ出せないまま、セスは玄関ポーチに腰を降ろした。



(フォルテュナは家の中には入っちゃいない…
鍵をあけた時に、きっとなにかがあったんだ。
予期せぬ何かが…)

ちょうど玄関のあたりは、スコットの家からは死角になっていた。
その事実が、セスを現実とは大きく違う推測に導いた。



(何者かがここで潜んでいたら…
10分あれば、フォルテュナをどこかへ連れ去ることも出来る筈だ。)

セスは自分の鼓動が速くなっていくのを感じた。
じっとりといやな汗が、手の平から滲み出る。



(早くなんとかしないと…!
そいつの目的が何かはわからないが…連れ去られた以上、フォルテュナの身が危険にさらされているのは間違いない。
しかし、なんで、フォルテュナを……まさか……!!)

その時、セスの脳裏に浮かんだのは、狙われたのは彼ではなく本当は自分だったのではないかという考えだった。
ここがセスの家だと知って、何者かが潜んでいたのだとしたら…
鍵を開けるのがセスだと考えるのが普通だ。
昼間ならともかくこの闇の中では、フォルテュナと間違えることだって十分にあり得る。




「フォルテュナーーーー!!」

セスは立ちあがり、まるで吠えるように彼の名を呼んだ。
何度も呼び続けながら、セスは廃屋を訪ねた。
だが、長い間、誰も足を踏み入れていないことは、そこに積もった埃でわかった。

セスは、さらにロジェの家の扉を叩いた。
しばらくすると、真っ暗な部屋の中に灯かりが灯り、寝惚け顔のロジェが姿を現した。



「おや、セスじゃないか。
帰って来たのか?
しかし、こんな夜更けにどうしたんだ?」

ロジェの少ない白髪頭は跳ね上がり、今までぐっすり眠っていたことをうかがわせた。



「起こしてしまってすまなかったな。
いきなりおかしなことを聞くが、今日このあたりで誰か見慣れない奴を見なかったか?」

「見慣れない奴ねぇ…気が付かなかったが…
どうかしたんか?」

「今日じゃなくても良い。
最近、見慣れない奴がこのあたりをうろうろしてたなんてことはないか?」

「……いや、そんな奴は…あ……」

「どうした?
誰かいたのか?」

「いや、関係ないかもしれんが…
人を見たわけではないんじゃが、ここ数日おかしな笛の音を聞いたぞ。」
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