「異世界ファンタジーで15+1のお題」四
(どこだ、フォルテュナ!
一体、どこにいるんだ!?)

フォルテュナの名を大きな声で叫びたい気持ちをぐっとこらえ、セスは森の中を駆け巡る。
今、フォルテュナは何者かの手によって捉えられ、自分の助けを待っている…
セスの心の中には、そんな間違った確信が灰色の不安と絡まりうごめいていた。



(早く見つけ出さないと…!!)

焦りの気持ちはどんどん膨らみ、息が切れるのも構わず、セスは暗い森の中を走り続けた。



「あっっ!!」

何かにつまずき、セスの身体は激しく地面に叩きつけられ、ランプの割れる乾いた音がその場に響いた。



(……俺は、何をやってんだ…)

自分の身の不幸を呪いながら態勢を立て直し足元の土を払う。
まだ燃え残るランプの小さな灯かりにセスが目を向けた時、その灯かりが不意に消え、目の奥に残影を残したままあたりは完全な闇に包まれた。



「……畜生……」

セスは小さな声で悪態を吐くと、その場に座りこむ。

足や手が傷付いたらしく、ひりひりとした痛みを感じたセスは、舌打ちをして顔をしかめた。



(もう少し明るくなるまで待つしかないか…)

セスは、木々に囲まれ見えない月に目を向けた。
諦めたように膝を抱き、セスはゆっくりと目を閉じる。

自分のせいでフォルテュナが連れ去られたのだという自責の念が込み上げ、セスの身体は小刻みに震えた。



(フォルテュナ…ごめん…
俺のせいで……)

セスの脳裏に、助けを求めるフォルテュナの苦しげな顔が浮かんだ。



「フォルテュナ……」

セスは思いを巡らせた。
なぜ、こんなことになったのかを…
誰がこんなことをやったのか…自分に恨みを抱いている者はいなかったか…
今日あったこと…フォルテュナのこと…長い長い洞窟…

膝に乗せた自分の頭ががくんと沈みこんだのを感じ、セスははっと意識を戻した。
いつの間にかまどろんでいたのだと自覚した時…セスの耳が微かな笛の音を捉えた。
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