「異世界ファンタジーで15+1のお題」四
「…や…やったのか…?」

おさまっていく土煙の中に、地面にのめりこむように倒れた化け物の背中があった。
その傷だらけの身体からはおびただしい血が流れ、生臭くなんともいえないいやなにおいがあたりに漂う。
ケネスは、化け物に動きがないか、目を凝らしてじっとみつめるが、どこにも動きはなかった。



「兵士長!
大丈夫そうですよ!
やったんだ!
ついに、こいつを倒したんだ!」

ケネスはそう言うと、奇声を上げて飛びはねる。
その様子にセスやライアンの緊張も緩み、そのうちケネスと手と取り合って一緒に飛びはね始めた。
ギリアスは、そんな中、剣を引き抜き化け物に近寄ると、化け物のあちらこちらを慎重に見て回る。
そして、ようやくラーシェルに向かい、ゆっくりと深く頷いた。
ラーシェルはその合図に、同じように頷き返す。



「ターニャ…本当によくやってくれた…
大丈夫か?」

「……ええ……私なら……大丈夫です。」

ターニャの息遣いは荒く、顔色も血の気を失い、弟子の男がターニャの背中をしっかりと支えていた。



「あの青年には気の毒なことをしてしまった…」

ラーシェルは、庭に転がる無残な亡骸にそっと目を落とす。



「……私達は…元々こういうことは覚悟して来ました。
二人が生き残っただけでも幸いです。
それよりも、ラーシェル様がご無事で…そして、あいつを倒せたことが…なによりでした。
ですが……」

「ターニャ、後のことは任せてくれ。
君は早く休んで……」

ラーシェルが、ターニャの体調を気遣い、声をかけた時、不意に空が明るくなった。
皆が、不思議に思いながら空を見上げた時、雲が二つに分かれ、そのから柔らかな虹色の光が降り注ぐ。



「あれは…!」

思わず声を上げたラーシェルの脳裏に浮かんだのは、あの日…子供達の背中に翼が生えた日のことだった。
あの日に見たのと同じ光景が、今まさに再現されていることに、ラーシェルは胸騒ぎのようなものを感じた。




「あ…あそこに…!!」

今度はケネスが興奮した声を上げた。
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