「異世界ファンタジーで15+1のお題」四
「……なんだい?
宙に浮かんでるのがそんなに珍しい?」

フォルテュナの問いかけに、セスは微笑みながら首を振る。



「いや、あの時とはずいぶん雰囲気が違うと思ってな。
まるで、今のあんたは別人みたいだ。」

フォルテュナはセスのその感想に、俯いて苦笑いを浮かべた。



「当然だよ。
僕はこの『コトノハの泉』を守る精霊なんだから…」

「精霊…?」

「そうだよ。
この泉の水はね、飲んだ者のどんな願いでも叶えてしまうんだ。
そのために、この水を求めてこの泉に来る者が後を断たない。
でも、水を飲ませるかどうかは、僕の気持ち次第なんだ。
つまり…この泉の番人みたいなもんだね。」

「……そうだったのか。
しかし、あんたが精霊だったとはなぁ…そうだ!精霊だったらあの洞窟でももっと簡単に出られたんじゃないのか?」

「残念だけど、君の世界での僕は精霊じゃなかった。
何の力も持たないただの人間だったんだ。」

「酷いな…人間の力ってのも、けっこうたいしたもんだぜ。」

「あ…別にそういうわけじゃあ…」

言いかけたフォルテュナは少し動揺してしまった自分が照れ臭く、そっと俯いた。



「俺…実は、今、すっごく喉が乾いてるんだ……
願い事なんてしない…それでも飲ませてもらえないのか?」

「そうだね…
一応、ここの水を飲みたい者は僕に話をするのが決まりだから。
……それが、どれほど大切な友達であっても例外は認められない。」

フォルテュナは、セスの視線から逃れるようにどこか遠くをみつめ、そう答えた。



「そうか…
それじゃあ……そうだ、ここに来るまでの話でもさせてもらおうか…
誰が聞いても信じてくれないようなおかしな話だけど、あんたならきっと信じてくれると思う。
いや、たとえ信じてくれなくても良いんだ。
ただ、聞いてほしいんだ。」

「そう…それは楽しみだね。
じゃあ、聞かせてもらおうか。」

フォルテュナは、セスを見下ろしながらゆっくりと白羽扇を動かす。



「えっと……どこから……
あぁ、そうだ。
俺がスコットさんの家でランプの油をもらって家に向かった。
そしたら……」

セスは、記憶を辿りながら、思い出したことをゆっくりと丁寧に話し始めた。
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