「異世界ファンタジーで15+1のお題」四




「……大変だったんだね。」

セスが話を終えた時、フォルテュナは深い溜め息を吐き、静かな声でそう言った。



「……信じてくれるのか?」

「セス……君には黙ってたけど……実は僕はルシアンを知ってる。」

「ルシアン様を知ってる!?
どうしてあんたがルシアン様を?」

思い掛けないフォルテュナの告白に、セスは身を乗り出してその理由を尋ねた。



「ほら…僕達、あの高い搭に上っただろ?」

「あぁ…ルシアン様がいた搭だな?」

「……あそこでオルゴールを開いた時に、僕はルシアンの記憶に触れた。」

「記憶って…そういえば、あの時のあんたは様子がおかしかったな。
急に動かなくなって…なんだかおかしなことを…
そうだ……確か、あんたはあの時『彼らはきっと幸せだった』って、そう言ったよな?
……まさか、彼らっていうのはルシアン様やラーシェル様のことだったのか!?」

フォルテュナは、ゆっくりと頷いた。



「僕はね、あの時、ルシアンが天界から落ちてあの国に来てから、子供達が天に上るまでの記憶を知った。
まるでその場にいたかのように…いや、時にはラーシェルやルシアンになってしまったかのように当時の出来事を鮮明に感じたんだ。」

「あんな短い間に、そんな長い間の事を?」

まるで信じられないといった風に、セスは目を丸くしてフォルテュナの顔をみつめた。
フォルテュナは、セスと視線を合わさないまま、遠くをみつめ、ゆっくりと頷く。



「確かに不思議だね…
でも、僕は確かに感じた…すべてを知った…
そして、さらに不思議なことには、それから後のことを今度は君が体験した…」

「……そうだ、その通りだ!
一体、どうなってやがるんだ!?
なぁ、あんたにはそのわけがわかるか?」

「僕にもわからないよ…ただ……」

「ただ…?」

セスは、フォルテュナの言葉を繰り返し、返事を待った。



「……誰かに伝えたかったのかもしれないね…
知って欲しかったのかもしれない…
そして、その想いを受け取ったのが、たまたま僕達だったのかもしれないって…そんな風に思うんだ。」

「伝えたかったって…ルシアン様やラーシェル様がか?
それとも、ジュネ様、いや、それとも他の者なのか?
それで、俺はどうしたら良いんだ?
どうすれば、その想いに応えてやれる?」

セスは矢継ぎ早にフォルテュナに問いかけた。
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