「異世界ファンタジーで15+1のお題」四
「……それは僕にもわからない…
誰が伝えたかったことなのか…
それに、伝えたかったのかもしれないっていうのは、あくまでも僕の印象だからね。
ついでに言えば……僕らに出来ることはおそらく…それを受け止めること…
真実を知ることなんじゃないかな…」

「受け止めること…そして、知ること…」

セスは、フォルテュナの言おうとしていることを理解しようとするように、フォルテュナの言葉をゆっくりと繰り返す。



「セス……君はきっといつも肩に力が入りすぎてるんじゃないかって思うんだ。
君は君の出来ることをいつもやりとげている。
なのに、君はそのことに少しも気付いていない。
……いや、満足していないということか…
それは、もしかしたら君の良い所なのかもしれないけど、悪い所かもしれない。
……こだわりや愛情が深すぎるのかもしれないね。
冷たい僕とは正反対だ…」

「それは買いかぶりだ。
俺は…非力だ。
いつも俺のやることは空回りばかりする。
俺の想う事の十分の一も実現出来ない。
それに、あんたは冷たい奴なんかじゃない!
確かにあまのじゃくな所はあるけど、それは冷たいのとは違う。」

フォルテュナは照れ臭そうに苦笑いを浮かべて俯いた。



「僕は本当に冷たいよ。
君とはまるで違う…
今回のことだって…僕は、君がきっと心配してるだろうとは思ったけど…
だけど、すぐに元の生活に戻った。
これで良いんだって思ってた。
……なのに、君はこんなにも僕のことを心配して探し続けてくれた……」

「俺は……気持ちが弱いから。
気になることを放っておけないだけなんだ。
気持ちを切り換えようとしても換えられない。
不安をはねのけたいから、つい頑張ってしまうだけなんだ。」

頭を抱えて俯くセスをフォルテュナはじっと見下ろした。



「それでも、それは僕にはない感情だ。
どんな理由であれ、人のために動けるってこと…僕には憧れみたいに思えるよ。
僕には何かが欠落してるんだ。
君の世界で、僕はそれを掴みかけた気がしたけど、こっちに戻って来たら元の木阿弥。
核はなかなか変われないもんだね…
……そんなことより、セス。
僕は今の話を十分に楽しんだ。
君にはこの泉の水をあげたいと思ってる。
さぁ、言って。君の願いはなんだい?」

「俺には願いなんて……」

言いかけたセスの言葉が不意に停まった。



「……フォルテュナ……この泉の水を飲めばどんな願いでも叶うんだな?」

「そうだよ。」

フォルテュナは事も無げに答えた。
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