イージーラブじゃ愛せない


あんなに悲しくて悔しかった事って人生でなかなか無いよ?

痴情のもつれで事件起こすヤツの気持ち、ちょっち分かっちゃったもん。相手の男が誰だか分かんないけどぶっ殺してやりてーって思ったし、俺も死にてーって思っちゃった。


本当にやりきれない。3日経った今だって全然ショックが拭えてない。


大切にしてたつもりだった。チャラい俺なりに精一杯誠意伝えて。好きで好きで、全力で大事にしてたつもりだった。


でも、何ひとつ伝わってなかった。


俺は自分で自分のことはわりと好きだったんだけどさ、さすがにもう嫌になったよ。上手に恋が出来ないこんな自分が。

色んな事が辛くて嫌になって。今の俺は息をしてるだけで精一杯。だから。


「私がおせっかい焼きすぎたせいだよね。どうしよう、本当にごめん」


申し訳無さそうに肩を落とす茜ちゃんとの正しい距離さえも、よく分からなくなってしまう。


「違うってば。茜ちゃんのせいじゃないから」


ポンポンとしょげた肩を抱き寄せるように叩くと、茜ちゃんの表情が戸惑いの色に染まった。それを見てハッと我に返る。

いけね。すぐこーいう事するから、俺ダメなんだよな。

別に他意があった訳じゃないけどさ。失恋中に元カノに対してこの距離は無かったな。


俺はさりげなさを装って手を離すと

「ちょっと事務所行って来る。新しい在庫表もらってくんね」

ヘラリと力ない笑顔を向けてから、その場を離れた。
 
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