イージーラブじゃ愛せない
「ちょっ……困るんですけど。りんと待ち合わせしてるから、ふざけてる時間ないんです」
「行かせない。今日がお前と高倉のヨリを戻すラストチャンスなんだろ。悪いけど、高倉が出発するまでここに居てもらう」
はぁ!?なにそれ、監禁じゃん。
あまりに強引で身勝手な言い分にポカンとアホ面になってしまう。
けれど成瀬先輩は私を玄関の壁に押し付けると、こちらのアホ面に構わずキスをしてきた。あーもー、これから出掛けるのに口紅とれる。
「別に、ヨリなんか戻りませんよ。大体これから遠くへいっちゃう相手に縋りつく気はさらさら無いし」
離された唇で早口にそう捲くし立てても、掴まれた手首は一向に離してもらえない。
「高倉に縋りつく気はないんだ?」
「無いって言ってるでしょ」
「じゃあこのまま俺に抱かれてもいいよな」
だから何でそうなるの?成瀬先輩ってもしかして凄く頭の悪い人なんだろうか。困ってしまった私は思いっきり眉を顰めてどうしたものかとしばらく口を噤む。
けれど。少しだけ考えを巡らせてみれば自分の中の矛盾した想いに気付かされて、私はハッと顔を上げた。