イージーラブじゃ愛せない


「成瀬先輩に抱かれるのは……嫌です」

「どうして?」

「…………ジョージ以外の人と寝たくない」


親友のまま別れを迎えたいと思ってるのに、ジョージじゃなきゃ嫌だなんて。あーあ、成瀬先輩め。面倒くさい事に気付かせてくれちゃって、どうしてくれんの。


成瀬先輩はものすごく渋い表情をしばらくしていたけど、やがて壁に押さえつけていた手をゆっくり離すと、溜息と共に苦笑いを零した。


「ちゃんと決められるじゃん、自分の価値」


そーいうモノなんだろうか、価値なんて未だによく分かんないけれど。けど、やっぱ私は寝るならジョージがいいと思うし、なんかそれ以外は嫌だと思う。

りんが悲しむからでも、ジョージに懇願されたからでもない。単純にジョージがいい、他は嫌だって言うワガママに気付いただけなんだけどね。


けれど成瀬先輩はまるで良い事をした子供を褒めるみたいに、私の頭を繰り返し撫でてくれて。優しい掌とどこか切ない彼の笑顔に、気が付くと私は

「でも私、成瀬先輩のことも結構好きです」

なんて、思わず口走ってしまっていた。


別に同情してフォローするとか、そういうつもりじゃなかったんだけど。

でもなんか、そんな笑顔で頭撫でられたら何か言わなくちゃいけない気がして。
 
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