イージーラブじゃ愛せない
それは成瀬先輩にとっても意外だったんだろう、切ない笑顔はキョトンとした表情に変わってる。
なんだろう、どう言ったらいいんだろう。相変わらず私は自分と誰かの関係を説明するのが下手だ。
必死に頭を働かせていると、思いがけずいい言葉が浮かんだので、私はちょっと嬉しくなって意気揚々とそれを口にした。
「ここに引っ越してきて、成瀬先輩なんだかんだ文句言いながらも助けてくれて嬉しかったです。なんか、“お兄ちゃん”って感じで。私、兄がいるんだけどあまり仲良くなくて。まともにお喋りしたり助けてもらったりした事なかったから。だからフツーの仲の良い“お兄ちゃん”って、こんな感じなのかなって。うん。かなり嬉しかったです」
我ながら上手に伝えられたと思う。でも、よくよく考えたら私、成瀬先輩と寝てるんだよね。今もキスしたし。これで“お兄ちゃん”はちょっと変か。
やっぱ失敗かも。と思い、ビミョーな半笑いを浮かべてしまったけれど、成瀬先輩は私の言葉にさっきよりもっと切ない笑顔を浮かべると優しく抱きしめてきた。
「……そっか。そういう事か。高倉に負けたのは正直癪だけど。……お兄ちゃんか……うん、全然負けてないな」
抱きしめながらやっぱり成瀬先輩は頭を撫でてくれて、それは随分と心地好いのでうっかりこのままで居たくなってしまうけど。
「そこまで言われたら離さないワケにはいかないな。行って来な、柴木。ヨリが戻っても戻らなくても、俺はお前の味方でいてやるから」
そう言って大人びた笑顔で解放してくれた成瀬先輩の腕から抜け出すと、私は自然と浮かんだ笑顔を向けて
「いってきます」
と玄関のドアを開いた。