イージーラブじゃ愛せない
「ゴメンね、バタバタして」
一通り片づけが終わった様子のジョージが、自分の分のグラスとビールを持ってようやく私の隣に座った。
とたんに、少し肌寒かった空気が柔らかに温もりを帯びる。
どこかホッとした。なのに。
「そうだ、腹減ってない?なんか食う?」
まったく落ち着きのない事に、ジョージはまた立ち上がってキッチンへ向かおうとする。
確かにお酒だけじゃ寂しいし、つまみでも欲しい所だけど。
「いいから座ってよ。落ち着かないし、ひとりで飲んでんの淋しいじゃん」
もうこっちは缶一本空けちゃってんだから。これ以上ひとりぼっちにさせておかないでよ。
立ち上がったジョージの服の裾を掴んでそう言うと、やつはストンと素直に座ってからいきなり私を抱きしめだした。
「……胡桃、もう酔っ払ってる?」
「なに急に?なんで?」
「いや……胡桃の口から『淋しい』なんて聞いたの初めてだったから」
「……そんなこと言ってない」
「えー……」
「言ってない」
「……そだね。言ってない。俺の聞き違い」
私を包むように抱きしめるジョージの身体はあったかい。
とりあえず、今夜は温かく眠れそうだ。それだけで今日はここに来た自分を正解だと思ってあげられるかもしんない。