黄昏の特等席
「はぁ・・・・・・」

 もう一度眠ってしまえば、次に目が覚めたときにエメラルドに会うことができる。
 それなのに、足が重く感じて、自分の部屋に戻りたくないと思っている。

「もう!」

 結局、グレイスは部屋の近くまで来ていたのに、図書室へ戻ることにした。
 図書室に戻ると、エメラルドはいなくなっていた。

「・・・・・・やっぱりいない」

 そりゃあそうだ。彼も眠そうにしていたから、自分の部屋に戻ったに違いない。
 ソファに寝転がる前に、くくっていたヘアゴムを解いた。

「そうしていると、雰囲気が変わるな」

 部屋に戻ったはずのエメラルドが本を片手に歩み寄ってくる。

「どうして・・・・・・」

 それはこっちの台詞であることを言いながら、グレイスの前で歩みを止めた。

「言ってくれないか?」
「私は・・・・・・」

 まさかエメラルドにもう一度会いたいという理由を本人に言えず困っていると、エメラルドが答えを当てようとしている。

「ひょっとして・・・・・・」

 こういうときは大抵エメラルドに心を読まれてしまうので、身構える。
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