黄昏の特等席
「私と離れるのが嫌だからか?」
「・・・・・・違う」

 すぐに否定することができなかった自分が腹立たしい。

「違うのか?」

 黙って頷くと、エメラルドはグレイスから書架に視線を移す。

「本を読みに?」
「それも違う」

 図書室で眠るために戻ってきたことを言うと、エメラルドもここに残ることにした。

「部屋に戻りなよ・・・・・・」
「ここから出て行くように言うなんて、あんまりだ・・・・・・」

 そんなことを言えないように、口を塞いでしまいたくなることを言い放った。

「塞いでしまっても構わないか?」
「良くない・・・・・・」

 エメラルドが近づいてきたので、グレイスは後ろに身を引いた。

「息ができなくなる・・・・・・」
「そういう返事か・・・・・・」

 何を期待していたのか、エメラルドはがっかりしていた。
 自分の部屋に戻ろうとすると、彼がグレイスの手首をしっかりと掴んでいる。

「何?この手・・・・・・」
「せっかく戻ってきたんだ。ゆっくりしなさい」
「戻ります!」

 グレイスが戻ろうとすると、エメラルドの手の力が強くなった。

「戻りたいの」
「そんなことしなくていい」
 
 何度戻ることを言っても、掴まれた手を振り払おうとしても、彼の拘束は緩まなかった。
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