黄昏の特等席
 体調を完全に戻すことに、思っていたより時間がかかってしまった。エメラルドは時間があるとき、ずっとグレイスのそばにいて看病をしてくれた。
 何度か仕事をしたいことをエメラルドに伝えたものの、風邪が治っていなかったので、それを許可してくれなかった。
 図書室の書架はあれだけ時間をかけて整理したのに、以前のようにバラバラに並べられていて、ゴミが増えて、汚れも目立っていた。
 時間をかけて図書室の掃除をしたものの、まだ気になるところはあるので、食事が終わってから、その続きをすることになった。

「食欲もいつものようになったな」
「うん」

 食欲が減ったものの、今は普通に食べることができている。
 エメラルドが隣に座って、食べているところをじっと見ていて、グレイスの頬を撫で、軽く引っ張る。
 彼の突然の行動と痛みに驚きながら、手を払おうとするものの、いつものように払うことができなかった。
 何のつもりなのか問いかけると、お仕置きだと返事が返ってきた。

「な、何の?」
「無理をしたからな」
「本当に痛い!」

 少しずつ力が強くなっていき、グレイスの顔が歪み、痛がってもやめてくれない。

「私がどんな気持ちだったかわかるか?」
「ふえ?」
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