黄昏の特等席
 毎日仕事をして、それから睡眠時間を削って、たくさん勉強をしているので、エメラルドは何度も休むように促した。
 しかし、グレイスは曖昧に返事をするだけで、エメラルドの言うことに従わなかった。

「あれだけ休むように言っても、休まなかった」
「それは・・・・・・」

 グレイスが休もうとしなかったから、エメラルドは怒っている。

「だって・・・・・・」
「言い訳をするな」

 グレイスに反論する余裕も与えず、エメラルドは続ける。

「無理をしたから、倒れて体調を崩したのだろう?」
「・・・・・・はい。その通りです」

 いつだってエメラルドは心配してくれたのに、グレイスは全部払っていた。

「心配だ・・・・・・」
「何が?」
「決まっている」

 顔を上げてエメラルドを見ると、引っ張っていた手がグレイスの頬をそっと包み込む。

「君は無理して頑張ろうとする。その結果がこれだ」
「・・・・・・そうね」

 無理をしていることは自分でもわかっていたが、まさか倒れたりしないだろうと甘い考えを持っていた。

「・・・・・・前に言っただろう? 私に甘えてもいいことを」
「うん。言ったね・・・・・・」

 あのときのことをグレイスも忘れてなんかいない。

「君を楽にしたい気持ちは今もある」
「どうして・・・・・・私に優しくしてくれるの?」
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